住まいの性能・仕様
住まいの性能・仕様
(gb・un共通仕様)
耐震性能
熊本地震においては震度7クラスの大地震が短期間で繰り返し発生しました。それにより、耐震等級1の1.25倍の性能をもつ耐震等級2の建物も倒壊しました。
一方で耐震等級1の1.5倍の性能をもつ耐震等級3は倒壊に至りませんでした。
ゆえに耐震等級3は耐力壁が増えるので、倒壊に至らない…ということですが、理由はそれだけではありません。
偏心率
耐力壁の配置バランスにより建物を捻じろうとする力が働きます。
建物には建物重量の中心である重心と地震力に抵抗する剛性の中心である剛心があります。
地震力は重心に作用し、一方で建物は剛心を中心に回転します。重心と剛心の距離が離れていると、建物を捻じろうとする力が働きます。この重心と剛心の距離を偏心率といいます。
この偏心率、建築基準法では0.3以下となっていますが、大地震時でも軽微な損傷に抑えようと0.15以下に抑えるのが望ましいのです。
水平剛性
耐力壁をうまく機能させるには、水平剛性を高めることです。
むかし利用していた水平剛性は火打ち材です。部屋の天井上部かどにナナメに設置された火打ち材主流でした。耐力は0.98KN/m、最近はあまり見かけなくなりました。
最近は合板(24・28㎜)の4周打ちが主流です。耐力は7.84KN/mで火打ち材の約8倍あります。
バランス
耐力壁を増やすことや捻じろうとする偏心率を小さくする、水平剛性を確保することによって耐力壁が有効に働き耐震性が増します。全体的に建物を見る必要がありますが…。
プランが完成してからでは遅いのです。プランと一緒に耐震も考えなくてなくてはなりません。
吹抜けや階段の位置はプラン・動線上、都合がいい場所だからと…決められるものではありません。建築士が敷地を読んでプランをつくりますが耐震性も考え、行っていることを知っていただければと思います。
構造区分の「4号」は廃止、木造2階建ては2号建築物に
建築士が設計した一定以下の規模の建築物に関しては、確認申請時の構造審査を省略することができましたが…。
今回の改正で4号の区分がなくなり、木造・非木造で区分されていた2号・3号は構造の区別なく階数や高さ、床面積の区分になります。
木造で階数に関わらず300m²を超える場合は、許容応力度計算が必要になります。
少し面倒になりますが…。
長期優良住宅の認定を取るときには必ず、計算した図面、各伏図を添付しているので…いままでの設計業務になんら問題はなさそうです。
許容応力度計算は、3階建て住宅の設計で何回か計算・申請をしています。
今後、必要であれば2階建てでも計算したいと思います。
壁量基準もZEH等踏まえ見直しへ
住宅の高性能化や太陽光発電等の搭載により建物の固定荷重が増加しています。それを背景に必要壁量の見直しということです。
建築基準法で定められている現行の仕様規定は、品確法による耐震等級1の耐震性を1とすると0.7程度の耐震性しかありません。
国交省が試算したZEHの重量・地震力(1.3~1.4倍)を踏まえ、仕様規定の壁量を1.4倍にすれば品確法と整合性がとれるとのことです。
断熱性能
UA値とは、外皮による平均熱貫流率のことをいい、この数値がちいさければ小さい程、断熱性能が良いことになります。
断熱性能を高めるほど熱が入りにくく、逃げにくくなるので、非暖房室でも室温の低下を防ぐことができるうえ、少ないエネルギーで全館(家全体)を連続して暖冷房できるようになります。
平成28年の省エネ基準おいてUA値0.75(宮城県4地域)以下にしなければいけませんが…。この数値は平成11年の基準と同じで、レベルがかなり低いものです。
国の基準が低い?
それでは何を基準にすればいいのか?
学識者等の団体、HEAT20(20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)でつくった、グレード1・2・3(G1・G2・G3)が指標としてあります。
宮城県4地域のG1:0.46、G2:0.34、G3:0.23になります。
これは非暖房室での最低室温がG1:10℃、G2:13℃、G3:15℃を下回らない温度を想定しています。ちなみに平成28基準は8℃です。
G1の10℃というのは非暖房室の表面結露の防止、すなわち住まいの健康を主目的としたものです。
G2・3の数値は室内の温度ムラを小さくし、住まい手の暮らしやすさの向上や温度ストレスを考えたものからきています。
平成28年基準からの暖房負荷削減率はG1:35%、G2:50%、G3:70%になります。
ゆえに…最低でもG1のUA値0.46(以下)の数値を目指せばいい?
専門家の方は、G2を目指しましょう!と言っています。
では、なぜG2なのでしょうか?
全館暖房にした場合、G1では平成28基準より50%エネルギーが多くなってしまいます。G2では±0で、G3は約40%削減することが出来ます。
ゆえにエネルギーが±0になるG2レベルを推奨しているのです…。
4地域のG2:0.34にするには…
付加断熱+トリプルガラス仕様にしないといけません。
プランや階数、床面積にもよりますが、約110万円(前後、UA値0.40から0.34へ)の費用がかかります。
ガソリン、木材の値上げに加え、食料品、資材等の価格が上がっている中、100万円はきつい! 予算に余裕があればG2を求めてもいいと思いますが…。
これが6地域であれば、G2のUA値は0.46になり、弊社の標準仕様(UA値0.40)でクリアしてしまいます。
6地域はどこでしょうか?
東京都や千葉市、さいたま市ですが…金沢市、福井市、岐阜市も6地域になっていました。
4地域と思っていましたが…。
最低でもUA値0.46を求めればいいのですが、0.40までであれば、極端に費用はかからないので弊社では標準仕様としています。un・gbとも同じ仕様です。
全館暖冷房でエネルギーが平成28基準と同じ±0になるのでG2ということですが…。
私はそこで判断しなくてもいいと思っています。
G1よりG2はいいに決まっていますが…。
UA値はあくまでも目安です。HEAT20のホームページにも載っています。
費用対効果も、現実的なローンの支払も大事です。
G1.5(UA値0.40、この言葉は存在しませんが)でも十分です。
最低はUA値0.40(G1.5)と憶えていただき、予算に余裕があればG2.5(以上)でつくることをおすすめします。
耐久性能
耐震性能と断熱性能はよく話題に上がるようになり、耐震性能レベルは等級3、断熱性能はG2レベルということが言われるようになってきました。でも耐久性についての内容はあまり聞こえてきません。
高性能な耐震・断熱を機能させるには、耐久性がないといけないと言われていますが…。
さて、どんなことでしょうか。
住宅の耐久性を大きく左右するのは「水」です。
水の発生要因は「雨漏り」と「結露」です。
結露
4人家族の場合、1日で発生する水蒸気量は9.4ℓにもなります。人体から4ℓ、炊事で1.6ℓ、家事で1.0ℓ、洗濯乾燥で0.9ℓ、入浴で1.3ℓ、その他0.6ℓです。
一升ビン(1.8ℓ)に換算すると5本分にあたる量になります。30日だと150本にもなりますが、さらにファンヒーターで暖を取る場合、灯油が燃えた分水蒸気が発生するので9.4ℓ/日にその分が追加され、すごい量の水蒸気が発生しています。
結露とは水蒸気が変化する現象であり、露点温度に達しなければ発生しません。
ちなみに、室温20℃、相対湿度50%の時、9.3℃になると結露が発生します。
結露に至る過程として移流(圧力勾配)と拡散(絶対湿度勾配)があります。
移流とは、温度差や風圧などの圧力差により、外壁に外気が侵入したり、室内の空気が天井や外壁に侵入することです。
拡散とは、絶対湿度勾配により、室内の水蒸気が壁体内へ流入することです。
換気が機能していない場合、住宅内の空気が吹き抜けや階段を経由して2階に移動します。1階より2階の外壁や天井・屋根部分の結露リスクが高くなります。そして、高湿な空気が壁内に入り込むと桁など木部が熱橋となって結露をし、腐蝕に至ることがあります。
結露計算で確かめるという手法も当然ありますが…定常計算の場合、水蒸気が透過する拡散(絶対湿度勾配)のみを前提に検討していますが、実際は材料の隙間からの移流(圧力勾配)の影響が大きいようです。
気流止め
最近は外壁の下地に耐力面材を貼り、耐力と気密を確保している施工が多いように見受けられますが、外側ではなく基本的に室内側に気流止めをしっかり設けることが重要になります。(現場発砲ウレタンの場合でも気流止めが必要です)
壁内に水蒸気を入れないということが前提ですが…厳密には気流止めを行っていても、時間をかけて侵入してきます。ゆえに、しっかり気流止めを行うことが必要になります。
通気層
断熱層に風が入り込み、静止空気が低温の空気と入れ替わると熱ロスが生じてしまい、それを防ぐのが防風層です。防風層の役割は耐力面材が担っていて、その上に透湿防水シートが貼られており、高い防風性能が担保されています。その防風防水層の外側に通気層が設けられ、外装材を超えて侵入してきた雨水を排出したり、断熱層に侵入した水蒸気を放湿する働きがあります。
通気層がないと雨水や結露水をせき止めることになり、腐蝕につながっていき、構造的な体力が保てなく、断熱性も弱まって行きます。
壁や天井のシミ・カビの発生は腐朽で壊れるまで発見されず、見つかったときにはかなりの重症です。直接目に見えないところでゆっくり侵攻していき、見つかったときには手遅れ…ということです。
雨漏れは契約不適合責任(かし保証)が問われますが、内部結露は問われません…。
問われないからなのか施工者・設計者は、どうして結露が発生するのか?理解していない方が多いようで…残念でなりません。
気密性能
C値はいくらを目指す?
断熱材がしっかり入っていても、気密が確保されていないと断熱効果はありません。
体感的な寒さの要因は断熱不足ですが、残り半分は隙間風によるものです。
気密性が低いと空気の入れ替えが生じ、上下温度差が大きくなります。
C値とは、隙間相当面積のことをいいます。この数値が小さければ小さいほど気密が取れ、断熱性が保てるということになります。
それでは、C値はどのぐらいあればいいのでしょうか?
昔は…1m²あたり5.0cm²という基準があったのですが、ゆるすぎてなくなりました…。
今は、1m²あたり1.0cm²以下が望ましいと言われています。
100m²(約30坪)の家だとすると…
家全体で名刺2枚分相当の隙間があることになります。
C値:0.5cm²/m²とすると、家全体で名刺1枚分相当の隙間です。
C値:1.0cm²/m²を目指すというのは、漏気による熱損失は建物全体の約5%で、省エネルギー上の影響は少ないからです。でも…結露のリスクは残ります…。
できれば0.5cm²/m²を目指してもらいたいです。
気密測定を行う場合、1現場で2回行います。
1回目は仕上がっていない状況で行います。隙間がどこにあるかを探すことができ、塞ぐことができます。2回目は完成した時に行います。
建物の気密は0.5~1.0cm²/m²というのも問題です。
基礎仕様が同じで数値に巾があるのは…隙間がどこにあるのか探せていないと見ることができるからです。
目指す数値は0.5cm²/m²ですが…ここで満足していたらいけません。
なぜならば…一年後の数値は30%減になります。ゆえに0.5cm²/m²以下を目標にします。完成時測定で0.3~0.4cm²/m²ぐらいはほしいところです…。
二年目以降からは数値の減少はないようです。
気密は0.5cm²/m²、ゆえにOKではなく、一年後に0.5cm²/m²になるように考えましょう。
そこには、すこしの手間と材料、工夫が必要になります。
換気設備は第1種or第3種?
第1種換気とは、給気・排気とも機械で換気を行う方式を言います。
基本的には家の中と外で圧力差が生じないため、気密性能レベルによる換気不良や温度ムラがありません。
熱交換を併用でき、排気する空気から熱や湿気を回収し、それを給気する空気に戻すことで室内の温湿度を安定させ、冷暖房エネルギーの削減に貢献してくれます。
第3種換気とは、排気のみを機械で換気する方式を言います。
ファンによる強制排気によって家の中を負圧にし、外気が給気口から入ることで換気が成立します。隙間があるとそこから外気が入ってくるので計画換気が出来なくなり、ゆえにC値は1.0以下にしないといけない、と言われています。
熱・湿度を交換できる第1種換気がいいのでしょうか?
それとも、シンプルな第3種換気がいいのでしょうか?
さて、どちら換気設備が住宅に適しているのか、いろいろ探っていきましょう!
快適性は?
冬期、外気温0℃・湿度70%、家の中の温度20℃・湿度40%のとき、暖房を止めて、1時間後はどうなるか…
第3種換気:温度10℃・湿度55%
第1種換気:温度18℃・湿度38%
温度10℃と18℃はかなり違いますが…壁面の輻射熱等を考慮するとイメージの温度差はないと思われますが、それにしても8℃差があることは確かで、第1種換気の方が快適と言えます。
それでは夏期の場合、外気温35℃・湿度55%、家の中の温度26℃・湿度50%のとき、冷房を止めて1時間後は…
第3種換気:温度30.5℃・湿度55%
第1種換気:温度26.9℃・湿度60%
温度差が3.6℃ありますが冬ほどの差にはなりません。
光熱費は?
第3種換気:暖房費38,000円(前後)冷房費17,000円(前後)換気代 3,000円(前後)
第1種換気:暖房費34,000円(前後)冷房費17,000円(前後)換気代27,000円(前後)
暖房費は第1種換気の方が4,000円少ないのですが、換気では24,000円も高くなります。
ダクト式の第1種熱交換換気の場合、第3種換気と比べて換気扇に使われるモーターの消費電力が上がります。熱交換素子という大きな抵抗をもつ素材と潜り抜け、ダクトを通って家の各所に空気を届けるには強力に送風するファンが必要になるからです。それと熱交換は1年のうち、冷房を使う期間が約3カ月、暖房は4ヶ月とすると残りの5ヶ月の熱交換換気は、あまり役に…。
熱交換器の多くは、外気温が氷点下になり熱交換素子が凍結破損するおそれが生じると、自動的にファンを停止する、または風量を落とす制御装置(デフロス運転)が装備されています。凍結防止運転の期間が1日以上に及ぶ地域では十分な換気量を確保できない可能性が高まります。その場合、外気温を温める装置(プレヒーター)が必要になってきます。
寒い地域である北海道では第1種熱交換換気の採用が多いイメージですが、普及率は高くありません。その理由の一つに、デフロス運転の稼働率の問題があります。
マイナス2℃でデフロス運転になる場合、それ以下の温度が続く北海道では一晩中または1日中になることもあり、計画的な換気ができません。そこでプレヒーターを使い、ある程度、温度を上げて室内に給気する場合、北海道だと何時間もプレヒーターを稼働することになり、熱交換することで暖房負荷を減らせると言っても…それ以上にプレヒーターの電気代がかかってしまい…普及率が低いのです。
導入・ランニング・メンテナンスコストは?
導入コストの差額は、第1種換気の方が約60~90万円、工事も含め考えると多くなります。また、15~20年後に交換する場合、それ以上の金額がかかってしまいます。
メンテナンスコストは第1種換気の場合、フィルターの交換で1年に約1万円(機種による)、第三種は2~3年で0.3万円ぐらいになります。
(6地域、36坪、2021年資料より)
まとめ
第1種のメリット
1.必要な空間の給排気量をコントロールしやすい
2.熱だけでなく湿度も交換できる(全熱交換型)
3.暖房機の稼働率が下がり、光熱費が軽減される(熱交換型)
4.外風圧の影響を受けにくい
第1種のデメリット
1.第3種に比べでイニシャルコストがかかる
2.第3種に比べて機械交換時に費用がかかる
3.換気代は第3種よりかかる
4.機械本体が第3種に比べ大きく、スペースが必要
5.フィルターの交換等、ランニング・メンテナンスは第3種より多い
第3種のメリット
1.第1種よりもイニシャルコストはかからない
2.C値1.0以下であれば計画換気ができる
3.第1種に比べて施工がシンプル
第3種のデメリット
1.冬は低温で乾燥した空気、夏は高温多湿の空気が直接入る
2.屋内が負圧傾向になり、外風圧の影響を受けやすい
ポイント
換気の目的は、住まい手が快適と感じる空気環境をつくることです。
それに適しているのは、第1種換気(全熱交換)になりますが…。
熱を交換してくれる第1種換気の方が光熱費はかからない…イメージだったと思いますが、実際は第3種換気より光熱費はかかっています。それだけエネルギーを多く使っているのです。また、導入費やメンテも…。
第3種換気のデメリット部分をすこしでも小さく出来れば…。
・C値(隙間相当面積)を0.5とする。
・ダクト式第3種換気を導入する。
・給気口はエアコンの近くに設ける。
予算に余裕があれば…第1種換気(全熱交換)という考え方でいいと私は思います。